責任はK電機側にある。 常務会の決定で、部品の購入先を中国のメーカーに切り替えることになったのだ。
金型は日本の中小企業の独壇場と言われてきたものだが、CAD(コンピュータ・エイデッド・デザイン)やCAM(コンピュータ・エイデッド・マニュファクチャリング)が中国にも広がり、データを転送すると、3次元の画像がたちまち作るようになった。 これにノウハウを加えると、普通の金型なら簡単にできてしまうのだ。
Kは深刻な表情で、「ウチもリストラなんですよ。 申し訳ないんですが、Oさんを迎えるゆとりがなくなりました」と告げた。
それまでは「Kちゃん」と呼ばれていたのが、「Oさん」になった。 自分より6歳年上のKを兄とも思っていたのだが、結局はただのビジネス関係だった。
金の切れ目は縁の切れ目である。 元旦の朝57時過ぎ、O一家はおせち料理を囲んでいた。
昨夜は紅白歌合戦から「ゆく年くる年」までだらだらと観てしまったから、寝正月に近い。 長男のK夫婦は近所の神社で初詣を早々と済ませてきた様子だ。

長女のKはさきほどからパジャマ姿だったのを、妻のKに叱られて、ジーンズに着替えた。 57歳になるのに、家から出て住もうとはしない。
おせちは例年よりも質素である。 数の子もないし、刺身も色艶がもうひとつで安っぽい。
さきほどからKひとりが陽気である。 紅白に出場したJポップ歌手のゴシップ話に花を咲かせようとしている。
Kは相槌を打っているが、気の乗らぬ風だ。 Oは全身がだるい。
お屠蘇の後、飲んだのは日本酒一合だけだが、酔いが回っていて、おりあまり良い酔い方ではない。 何か澱のようなものが胸のあたりに溜っていて、気分が滅入っていく。

Kの金属的な笑い声にとうとうKがきれた。 「K、そんなことはどうでもいい。
それよりも、オヤジ、仕事の方、駄目になったんだって?」心配そうな声である。 父親の予定していた就職口がふいになったことは、Kから聞いたのだろう。
「うん、まあ、そういうことだな」「それで、どうするつもりなんだい」Kはシステムエンジニアとして会社では嘱望されているらしい。


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